ITコンサルタントとは
ITコンサルタントはフリーランスとしても活動しやすい職種です。IT技術に関する企業のニーズは絶えることがないため、豊富な知識と技術があれば案件が途絶えることなく、安定した収入を得ることが可能です。
しかし、下準備を十分に行わないまま見切り発車で独立してしまうと、思うように案件が取れない、収入が安定しないといった事態に陥りかねません。
今回の記事では、ITコンサルタントとして独立することのメリットやデメリット、注意点について解説します。
ITコンサルタントは大きく5種類に分けられる
ITコンサルタントは、ITに関する課題を解決するためのサポートを行う職業です。対象とする業務内容によって、大きく5種類に分けられます。以下に簡単にご紹介しましょう。
IT戦略コンサルタント
IT戦略コンサルタントは、企業のIT戦略における課題設定から立案、実行支援を行う仕事です。ITに関する知識はもちろんのこと、経営的な知識と視点も必要になります。
CRMコンサルタント
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)に関するシステムの開発、導入を行うのがCRMコンサルタントです。効率的な顧客管理業務のためのシステム立案、導入を行います。
具体的な作業としては、メルマガ配信やポイント付与のシステム、リピーター獲得のための戦略に関するシステムの提案、導入、マネジメントなどが挙げられます。
SCMコンサルタント
SCM(Suply Chain Management)は企業内の物流システムの構築を通じて、サプライチェーン全体の効率化を図る手法を指します。
SCMコンサルタントは、ものづくりから販売まで、また企業から消費者までの「モノの流れ」を円滑にするためのシステムを生み出す仕事です。
SAPコンサルタント
ドイツのソフトウエアメーカーであるSAP社が販売するパッケージソフト(ERP)を利用して、ビジネスの効率化をサポートする仕事です。
会社が抱える経営問題を分析し、必要とされるITシステムの設計から開発までをマネジメントします。
PMOコンサルタント
PMO(Project Management Office)は組織全体のプロジェクトマネジメントの効率を向上させるためのマネジメント組織を指します。
PMOコンサルタントはクライアントである企業全体のプロジェクトを管理し、資料作成や進捗管理などのマネジメントをサポートして、プロジェクトが抱える課題の解決や、業務効率化を促進する仕事です。
ITコンサルタントとして独立するための準備
ITコンサルタントは豊富な知識や経験が必要になることから、未経験の状態でフリーランスを目指すのは非常に困難です。フリーランスのITコンサルタントを目指すのであれば、経験や資格、人脈などをしっかり積み上げておかなければなりません。具体的に準備すべきことを以下にご紹介します。
SIerや関係企業で正社員として経験を積む
ITコンサルタントとして独立するためには、最低でも3年程度の実務経験が必要です。
SIarや関係企業で正社員として経験を積み、立案から開発、導入、運用支援に至るまで、プロジェクト遂行全体の過程を自分自身でこなせるようにならなくてはなりません。
関係資格を取得する
資格がなくてもITコンサルタントと名乗ることはできますが、特に企業という後ろ盾がないフリーランスにおいては、資格保有者であるということが信用を勝ち得る武器になります。
特におすすめなのが「ITコーディネーター」や「ITストラテジスト」、「中小企業診断士」などです。業種やITコンサルタントの種類によって必要な資格は異なりますので、自身の方向性を定め、それに必要な資格を見極めることが重要です。
軌道に乗るまでの生活・運転資金を用意する
フリーランスのITコンサルタントは自身の腕だけで仕事をしていくことになりますので、会社を設立する時のようなまとまった開業資金は必要ありません。
ただし、ホームページや名刺の作成費、オフィスを構える場合は賃借料やオフィス家具の購入費など、ある程度費用はかかりますので、独立前に必要な運転資金は用意しておきましょう。
それに加え、すぐに案件を獲得できるとは限りませんので、軌道に乗るまでの生活費も必要です。半年~1年分の生活費を目安として貯金しておきましょう。
人脈を作っておく
会社員であれば営業部門が構築したコネクションを利用できますが、独立すると自分自身で営業活動を行ない、案件を獲得しなければなりません。
独立前から人脈を作っておくことで案件獲得数が増え、仕事の幅が広がります。実際の知り合いだけではなく、セミナーや研修、インターネットにも出会いのチャンスはあります。積極的に人とコミュニケーションを取り、人脈の構築を図りましょう。
得意分野や売りになるところを把握しておく
商品を買う時は、その商品にどのような特長があるか、購入することでどのようなメリットがあるかを確認するのではないでしょうか。
フリーランスのITコンサルタントも同様で、自分という「商品」をクライアントに売り込むためには、自身のセールスポイントを明確にする必要があります。
自身のスキルや経歴を開示し、人物像を理解してもらうことで、クライアントの信用を得ることができます。また、適切な自己開示はミスマッチのリスクを軽減し、自身の能力や希望に合った案件を紹介してもらえる可能性を高めます。
ITコンサルタントとして独立するために必要なスキル
ITコンサルタントとして独立するためには、先ほどご紹介したとおり組織に属して経験を積み、知識や技術を得るのが早道です。それに加え、個人事業主として仕事を遂行するためには+αのスキルが必要になります。ITコンサルタントとして活動し、独立するために必要なスキルをご紹介します。
ITコンサルタントの基本的なスキル
まずはITコンサルタントになるために必要なスキルについて解説します。
ITスキル
ITコンサルタントとして活躍するためには、ITに関する幅広い知識と経験が必要です。しかし、特に企業に属してITコンサルタントに従事する場合、同じ作業しか任されず、経験を積みにくいという問題点があります。
いずれ独立を考えているのであれば、資格取得や研修、セミナーへの参加、他のコンサルタントとの情報交換などを積極的に行い、IT全般の知識やスキルを蓄積する姿勢が求められます。
問題解決能力
ITコンサルタントにはさまざまな種類がありますが、いずれも最終目的は「企業の抱えている問題を見つけ出し、解決するための手段を提案・実行する」ことに尽きます。
課題やその解決の手段は企業によって異なりますので、状況を見極め、独自の解決策を考える論理的思考力や経営的知識も求められます。
コミュニケーション能力
IT戦略の遂行は企業の将来を左右する重要な任務であり、信用できない人材には任せることはできません。
たとえすばらしいスキルを持っていたとしても、一方的に考えを押し付けたり、知識のない相手を見下げるような言動を取ったりしていると、周囲の理解や協力が得られずプロジェクトがスムーズに進行しません。
相手の立場に立って話をするコミュニケーションは、ITコンサルタントにとっても重要なスキルです。
独立するために必要なスキル
独立して個人事業主としてITコンサルタント活動を行うのであれば、上記に加え、以下のようなスキルも必要になります。
マルチタスク力
会社員であれば、営業活動や事務手続きは他部門に任せて、専門的な業務に集中することができます。
しかしフリーランスは本来の業務をこなしながら、次の案件を獲得するための営業活動や帳簿の作成、確定申告なども並行して行わなくてはなりません。それぞれのスケジュールを把握し、効率良くこなすマルチタスク力が必要になります。
セルフマネジメント力
フリーランスのメリットとして、自分で働く場所や時間を選べる自由度の高さが挙げられます。しかし、自由には必ず責任が伴います。
会社員とは異なり、作業の進捗を確認してくれたり、体調が悪く仕事ができない時にカバーしてくれたりする人はおらず、自分で全ての業務をこなす必要があります。
そのため、自身で作業計画を立てて滞りなく実行するセルフマネジメント力と、体調を崩さないように気をつける自己管理能力が強く求められます。
営業力、交渉力
企業という「看板」のないフリーランスは、自身のノウハウを武器として企業に売り込みを行い、案件を獲得するための営業力や、単価や就業条件の希望を通すための交渉力が必要になります。
上記のスキルに自信がないという場合は、エージェントを活用するのも一つの手段です。エージェントが案件の紹介や進捗状況の確認、営業活動などのサポートを行ってくれるため、安心して本業に集中できるでしょう。
ITコンサルタントの年収や単価相場は?
ITコンサルタントになると、どの程度の報酬が得られるのでしょうか。参考までに、会社員の年収及びフリーランスの単価の一例を見てみましょう。
会社員の場合の平均年収
経済産業省が2021年3月に公表した「我が国におけるIT人材の動向」内の「DXを担うIT人材の給与水準」によると、ITコンサルタントのオファー年収は6~9年目で800~1,200万円、9年を超える場合は1,200~1,500万円となっています。
大学卒業後、ITコンサルタントとして経験を積めば、30台前半で年収1,000万円を超えることも不可能ではありません。
フリーランスになった場合の単価相場
それでは、フリーランスになった場合の単価相場を見てみましょう。レバテック社が公表している単価相場によると、ITコンサルタントの平均単価は76万円、最高単価は145万円となっています(2022年2月現在)。年収に換算すると平均912万円、最高1,740万円となります。
労働時間や経験年数によって単価には差がありますが、会社員よりも自由度を高めつつ、高収入を狙える可能性は十分にあるといえます。
参考:レバテック株式会社
ITコンサルタントが高い収入を得られる理由
会社員・フリーランスに関わらず、ITコンサルタントは高い収入を得られる傾向にあることが分かりました。その理由としては、その専門性の高さと人材不足が挙げられます。
IT戦略の立案から導入までを牽引するITコンサルタントは、高いスキルと能力が求められます。需要に対して供給が追いついておらず、それが年収の高さに反映されているのです。
ITコンサルタントとして独立するメリット
ITコンサルタントとして独立することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを以下にご紹介します。
分野やペースなどを考えて仕事を選べる
テレワークが推進されているとはいえ、現代日本の働き方は会社に出勤してのフルタイム勤務が主流となっています。また、自分が望む分野やペースで仕事ができないことも多く、働き方や業務内容に関して選択肢が少ないというのが現状です。
しかし、独立すれば自分の好きな分野の仕事を、自分の好きなペースで受注することができます。在宅勤務や短時間勤務も可能になり、ワークライフバランスが取りやすくなる点がフリーランスの魅力といえます。
受注した仕事とクライアントに集中して取り組める
企業に所属してITコンサルタントに従事する場合、後輩や部下の育成、事務仕事といった本来の業務とは異なる仕事もしなくてはなりません。
職場内の人間関係や会社の採算などを考慮して仕事を進めていかなければならず、思うようにクライアントの依頼に応えきれないということもあります。
しかし、フリーランスとして個人で仕事を受ければ、余計な雑事に煩わされることなく、受注した仕事とクライアントに集中でき、自らのパフォーマンスと顧客満足度を高められます。
SIerや企業よりもコストがかからない分安い見積もりを出せる
SIerや企業には、ITコンサルタント以外にも総務や人事、経理といった部署で働くスタッフがいます。その人件費や運営費を報酬に上乗せしなければならないため、フリーランスと比較すると、単価が高くなる傾向にあります。
フリーランスはコストがかからない分、安い見積もりを出せます。Slarや企業では採算を出しにくい仕事でも受けられ、受注の選択肢が広がります。
企業の管理職に再転職するチャンスができる
会社員としてコンサルタントに携わっている場合、企業の体質によってはいつまで経っても同じ仕事しか任されず、経験や技術を蓄積できないということもあります。
フリーランスとして多様な案件にチャレンジすることで、一企業では得られないノウハウを培える可能性が高まります。再転職にチャレンジする際、その知識と経験が高く評価され、管理職に就ける可能性が高まります。
ITコンサルタントとして独立するデメリット
ITコンサルタントとして独立することで自由度の高い働き方が可能になりますが、裏返すと全ての業務を自分で責任を持って行わなければならないということでもあります。
独立を目指すのであれば、メリットだけではなくデメリットも把握し、対処法を考えておきましょう。
収入面で不安定なため社会的信用度が下がる
フリーランスとして独立すると会社員として安定した収入が得られなくなるため、社会的信用力が下がってしまいます。そのため、住宅や車のローンが組めない、賃貸住宅が借りられないといった問題が起こりやすくなります。
たとえ会社員より多くの収入があったとしても、フリーランスであるというだけで社会的信用が得られにくいというのが現状です。ローンや賃貸契約は、独立前に済ませておくことをおすすめします。
クライアントに対して立場が弱くなりやすい
会社員コンサルタントであれば、クライアントとトラブルが起きた際、会社が交渉を行ってくれます。
しかし、フリーランスは組織に守られていないため、契約と異なる稼動を強いられる、実働分の報酬が支払われないという事態も起こりえます。
このように、クライアントに対して立場が弱くなる傾向にある点が、フリーランスのデメリットの一つであるといえます。
税金などの手続きも自分でやる必要がある
会社員であれば、確定申告を会社が行ってくれます。しかし、フリーランスは個人事業主として、自分で税金などの手続きを行わなければなりません。
ただし、フリーランス向けの会計ソフトも多く出回っているため、確定申告はそう難しいものではありません。税理士にサポートを依頼することもできますので、手続きが苦手な方は相談すると良いでしょう。
独立後のITコンサルタントが仕事を受注する方法
独立後における最大の課題は「いかにして案件を獲得するか」ということに尽きるでしょう。フリーランスのITコンサルタントが仕事を受注するためには、ありとあらゆる人脈やツールをフル活用する必要があります。具体的な方法をいくつかご紹介します。
構築した人脈からの紹介
以前の職場や取引先の人など、構築してきた人脈から紹介してもらう方法です。自分の性格やスキルが分かっているため、適切な案件を紹介してもらいやすいというメリットがあります。
しかしその反面、紹介してもらえる案件が、会社員時代に取り組んだことのあるジャンルに留まりやすく、経験の幅を広げにくいというデメリットがあります。
マッチングサービス(クラウドソーシングやエージェントなど)
人脈が広くない、営業活動が苦手という方は、マッチングサービスの利用をおすすめします。
マッチングサービスの代表としてはクラウドソーシングやエージェントなどが挙げられます。それぞれ以下のような特徴がありますので、自分に適したサービスを選びましょう。
サービス名 | 運営側からのサポート | 案件の内容 |
---|---|---|
クラウドソーシング | 基本的にはフリーランス自身が案件を探し、クライアントと交渉する | 在宅勤務や短期・短時間など、働き方に幅がある傾向にある |
エージェント | ・スキルや希望する働き方に合った案件を紹介してくれる ・企業との面談や交渉といった営業活動をサポートしてくれる | 常駐型・フルタイム勤務が多い傾向にある |
セミナーを開催する
自分でセミナーを開催するのも良い方法です。現在はオンラインでのミーティングやセミナーも増えていますが、実際に顔を合わせることで、自分の能力や人間性をより強くアピールでき、人間関係の構築につながります。
対面であるというメリットを生かし、双方向の会話や質疑応答もしっかり行うことで、エンゲージメント(愛着)の獲得も望めます。
ホームページやSNSを用いた営業活動
ホームページやSNSで自身のポートフォリオや取り組みを発信し、案件を獲得する方法です。幅広く情報を発信できるため、思いもよらない場所、業種から声がかかる可能性があります。情報収集にも役立ちますので、積極的に活用しましょう。
ただし、特に匿名性の高いSNSの場合は、クライアントからの信用を得にくいというデメリットがあります。対面やオンラインでの面談を行い、信頼関係の構築に努めましょう。
電話やDMでの営業活動
企業に電話やDM送付を行い、自身を売り込む方法です。飛び込みの営業に近い形になるため高い営業力が必要になること、案件獲得が容易ではないという点は注意が必要です。
メリットとしては、マッチングサービスを仲介しないため、クライアント、フリーランス双方のコストを減らせるという点が挙げられます。ハードルは高いですが、うまくマッチングすれば高収入につながる可能性は十分にあります。
独立したITコンサルタントの将来性
技術改革が目覚しい現在においては、これまで需要のあった仕事が急に不要とされる事態も起こりえます。
しかし、独立したITコンサルタントのニーズは今後もますます高まると予想されており、将来性の高い職種であると考えられています。その理由をいくつかご紹介します。
人材不足が続いており今後もニーズは伸びる
IT業界は慢性的な人材不足だともいわれています。IT業界の進化と拡大スピードの目覚ましさに加え、少子高齢化やIT業界の「仕事がきつい」というネガティブイメージにより若い人材が増えにくいためであると考えられています。
そのため、フリーのITコンサルタントは引く手あまたです。卓越したスキルと経験を持つITコンサルタントであれば、案件の獲得や報酬アップの交渉も有利に進めることができるでしょう。
フリーランスであることが小回りが利くという強みになる
企業に属するITコンサルタントは、企業のルールや採算性に縛られるため、思うように動けない場合があります。
それに対し、フリーランスのITコンサルタントはクライアントのニーズに応えることを第一命題としたサービスの提供が可能です。そうした小回りが利く点が、フリーランスの強みといえるでしょう。
様々な分野のITコンサルタントが必要に・専門性が強みになる
先ほどご紹介した通り、ITコンサルタントにはさまざまな種類があり、扱うシステムや専門領域も異なります。クライアントのニーズに合致したオンリーワンの専門的知識・経験を持つフリーランスは、クライアントに重宝される存在になることでしょう。
まとめ
ITコンサルタントとして独立することのメリットやデメリット、注意点についてご紹介しました。ITコンサルタントはITスキルを持つ専門家として、今後ますますニーズが高まると予想されており、フリーランスとして活躍できる可能性は十二分にあるといえます。
しかし、高い専門性が求められる仕事であるがゆえに、初心者がすぐに独立するのは困難です。まずは会社員として知識と経験を積み、人脈を広げて、フリーランスとなる下準備を整えることから始めましょう。
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