DXとは
「DX(Digital Transformation)」とは2004年にスウェーデンのウメオ大学教授エリックストルターマン氏によって提唱された概念のことです。
「進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより豊かにしていく」という意味を持ちます。
つまり、進化したデジタル技術を仕事や生活に浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念です。
DXという言葉を聞くと難しそうに感じますが、IT技術の進化によって作られたシステムに注目してみると、すでに私たちの生活にかかわるものが変化してきていることに気が付きます。
例えば、銀行口座の取引をオンライン上で行えるインターネットバンキングシステムや、新幹線や飛行機などのチケットをオンライン購入が挙げられます。
このDXを建設業界と組み合わせると「建設DX」と呼びます。
現代では、外部環境の変化に合わせて、組織やビジネスモデルを柔軟に変化させていくことが強く求められています。
建設業界におけるDX
現在、さまざまな業界でDXが取り入れられていますが、建設業界でもDXを取り入れる企業が多くなってきています。
2019年末頃から世界的に流行した新型コロナウイルスの影響で、企業は会議や打ち合わせにZOOMなどのオンライン会議を使用するようになりました。また、商品の通信販売をECサイトで行うなどビジネスのオンライン化を急激に進めました。
つまり、オンライン対応していないビジネスはとう汰されてしまう傾向があり、企業はできるだけ早く外部環境に合わせてビジネスモデルを変化させなくてはなりません。
これは、建設業界に関しても同じです。
建設業が現代で生き残っていくためには、DXを取り入れた上で柔軟な変化を受け入れていく必要があるのです。
オフィスワーク中心の企業に限らず、建築業界の様な企業もDXを取り入れることで業務の効率化や利益の向上を目指しています。
建設業界の現状
新型コロナウイルスは建築業界に大きな影響を与えましたが「2025年の崖」も建築業界にとって考えなければいけない問題となっています。
「2025年の崖」とは2018年に経済産業省がまとめた調査報告により明らかにされた問題です。
この調査報告では、企業の多くのシステムで老朽化が進んでいることが指摘されています。それに加えて、各部署や業務に適するように、場あたり的にシステムをカスタマイズしてきたため、ブラックボックス化してしまっている事を指摘しています。
そして、この状態を改善できなければ、2025〜2030年の間で最大12兆円(年間)の経済損失が生まれる可能性があると言われています。
建築業界でも、DXを取り入れビジネスモデルを作り変えなければならないとされています。
建設業界がDXで解決したい課題
①業務の効率化
建設業界では、メインで活躍している労働者の年齢が高いこともありIT化が遅れています。
これまでのやり方を変えることに抵抗があったり、ITやデジタルに対して抵抗感が強い労働者が多いというのも建設業のIT化が進まない原因の一つです。
また、建設業のIT化の遅れには、一つの現場に対して複数の下請け会社が入り込んでいるといった業界特有の性質もあります。
そのため、ある現場に3社関わっていたとして、そのうち一つでもIT化に対応できなければ、その現場はアナログで進める以外なくなってしまいます。
また、その現場はIT化できたとしても、次の現場で同じようなことが起こり実際の現場で活用できないとなると、積極的になれない企業が出てきてしまいます。
だからこそ、業界全体をあげてDXを進めていかなければならないのです。
②ノウハウの継承
建築業界では、業界全体の高齢化とそれに伴う熟練者の減少が指摘されており、ノウハウ継承の遅れが目立っています。
元来、アナログ業務が多い建築業界では職人の感覚に頼っていたため、ノウハウのマニュアル化が進んでいません。
また、高い技術があっても、それを伝えるためのスキルを身につけていないことも多いため「教える」ことが難しいという方も少なくありません。
さらに、人手不足という問題もあり、新人の育成にまで手が回らないという現実もあります。
長い年月を積んで熟練技術を習得するという、これまでの方法では生産性を維持することすら難しくなっているため、早急なシステム改革が求められています。
建設DXの各社の具体的な取り組み
ここまで建築業界の現状と課題について解説してきましたが、企業がどんな取り組みを行っているのか知りたいという方もいらっしゃるかと思います。
ここからは建設DXによる実際の企業の事例についてご紹介します。
鹿島建設株式会社
鹿島建設株式会社は、特にAIやIoTなどのデジタル技術を活用した「鹿島スマート生産ビジョン」が注目を集めています。
建築業界のDX化を「作業の半分はロボットと、管理の半分は遠隔で、全てのプロセスをデジタルに」のコンセプトを掲げて取り組んでいます。
建設業界が長年悩まされている労働力不足解決に効果的だと言われています。
また、日本初のスマートエアポートシティ「HANEDA INNOVATION CITY」に、鹿島建設の構築した空間情報連携基盤が活用されています。
人やロボットの位置情報をリアルタイムで表示し、施設管理の効率化を実現しています。
清水建設株式会社
清水建設は「ものづくりをデジタルで」「デジタルな空間・サービスの提供」「ものづくりを支えるデジタル」の3点でDX化に取り組んでいます。
建築運用のDXを支援する「DX-Core」の商品化を進めています。
「DX-Core」は建物内の建築設備やIoTデバイス、各種アプリケーションの相互連携を簡単にするソフトウェアです。
「DX-Core」の活用例として、石川県金沢市の清水建設北陸視点では、社員がオフィスの席に着くと床の空調が作動し、事前に設定しておいた好みの風量に自動で調節するというものがあります。
設備機器メーカーなど19社との協業によりさらに広い建物設備システムとの連携を図るシステムを開発中です。
まとめ
今回は建築業界におけるDXについてご紹介しました。
新型コロナウイルスの影響や「2025年の崖」も目の前に迫って来ている今、DXを取り入れる事は建築業界に必須の課題です。
決して手軽に導入できるものではありませんが、今導入しなけれデジタル化が進む市場ではとう汰されてしまう可能性もあります。
まずは、どんなシステムがあるのかを見比べて、取り入れやすいものから準備を始めて行きましょう。
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