「モノからコトヘ」新しい時代を切り開くイノベーション、新規事業開発に必要なプロセスを徹底解説!

「開発」とは、新しい技術や製品を実用化すること、または知恵や能力を導き出し活用することを指します。では、新規事業における開発とは何を指すのでしょうか。

それは「新しい時代を創造する商品やサービスを生み出す」ことです。0から1を創出し、新時代を創り出す。実際、これまで多くの新規事業により、様々な商品やサービスが誕生しました。

例えば、日本国有鉄道(通称国鉄)では1964年10月1日より「新幹線」の営業運転を開始。新幹線は、当時の最新技術を最大限に用いたもので、東京から大阪を4時間(当時計測)で走り切るという世界最高レベルの鉄道システムでした。この新幹線により、時短効果、工場誘致など、多くの経済効果が生まれました。一説によると、その創出効果は9,000億円にも上ると言われています。

このように、新規事業の開発がもたらす恩恵は非常に大きいものです。とはいえ「新規事業の開発には、何から始めれば良いのか?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、新規事業開発に必要な思考プロセスと効率的なマネジメント手法について解説していきます。

参考:公益社団法人「発明協会」イノベーション100選 アンケート投票トップ10

目次

新規事業開発に求められる思考プロセス

新規事業の開発に必要な思考プロセスは「創造すること」です。

手当たり次第、新規事業を立ち上げて開発を繰り返しても、成功へは近付きません。成功には、今の時代に相応しいプログラムの立案、そして計画の進行が必要です。同時に来たる未来を想定して、新しい物を創り出さなければなりません。

ここでは、創り出す手法イノベーションについて、実際の成功例を踏まえながら解説します。

新時代を見据えたイノベーション

「イノベーション」という言葉を耳にしたことはありませんか?もしくは、聞いたことはあるが具体的には分からないという方も多いのではないでしょうか。まずはイノベーションが持つ言葉の意味について解説します。

イノベーションとは、新しい切り口、新機軸、新しい発想などの意味を持つ言葉です。その意味は、総じて「今の時代に適切なアイデアを創造すること」になります。平たく言えば、これまでの手法や考え方を一新して、業績の改善につなげることです。

イノベーションの重要な点は「陳腐化」を無くし「新要素」を取り入れること、または「今」の時代に相応しいものを「創りだすこと」です。そこで、具体的な例を一つ挙げてみます。

平成初期と後期を比べたところ、時代を大きく変えた開発にアップル社の「iPhone」が挙げられます。iPhoneの普及が高まるにつれ、国内ではスマートフォンの普及が加速しました。その勢いは衰えることなく増え続け、近年では全世帯の80%以上がスマートフォンを保有しています。

引用元:総務省 統計調査データ 通信利用動向調査 令和2年調査 PDF2ページより

スマートフォンの普及により、インターネットを利用する人が増加しました。その要因の一つに手軽さが挙げられます。

これまでインターネットの使用機器は、パソコンが主流でした。しかし近年では、手軽に使えるスマートフォンでのインターネット利用が増えています。この利便性が、インターネットの利用増加に拍車をかけたのです。

引用元:総務省 統計調査データ 通信利用動向調査 令和2年調査 PDF3ページより

つまり、インターネット利用者の増加が「今」の時代の象徴として挙げられます。次に、インターネット利用による時代の変化です。

インターネット利用用途の一つに、YouTubeを挙げる人が増えています。YouTubeの視聴者が増えれば、必然的に動画を作る人が必要です。このような経緯により、現代の職業にYouTuberが誕生しました。

しかし、YouTuberとして成功することは至難の業です。まず、収益化に至るにはチャンネル登録者数1,000人を達成しなければなりません。この数は、SOCIAL BLADEに登録されているチャンネル数全体のおよそ10%になります。(SOCIAL BLADEは、YouTubeのチャンネル登録者数や再生回数を調べられるサイトです)

需要があるからといってYouTuberになっても、成功はできません。それでは、どうすればチャンネル登録者数1,000人に近付けるのか。その成功には、イノベーションが必要です。

自分の得意なジャンルで独自性や優位性を確保しつつ、顧客ニーズを取り込む。特に重要となるのは、これからの「時代が必要とするジャンルを創造する」ことです。

最近では「学び」に関するコンテンツが人気を集めています。その理由は、エンターテインメントとして楽しみながら学べるためです。ユーザーは動画をきっかけに興味を持ち、主体的な学びにつなげます。これは、受動的な「教育」から能動的な「学び」への変化であり「今」の時代が必要としているコンテンツの創造だと言えるでしょう。

このように、イノベーションとは「今の時代に適切なアイデアを創造すること」を指します。同時にマーケティングによる的確な市場調査を実施することで、イノベーションの精度は更に増すことになるでしょう。

参考:総務省 統計調査データ 通信利用動向調査

時代に求められしは「モノ」から「コト」ヘ

「モノ消費」「コト消費」という言葉をご存知でしょうか。これは、顧客の消費欲求を二つに分類したものです。モノ消費は所有による機能的価値を、コト消費は所有による一連の体験や体感を重視しています。

これまではモノ消費が主流でした。しかし近年では、新しいニーズとしてコト消費に注目が集まっています。それを物語るように、Googleトレンドでは2006年1月頃からコト消費について検索する人が増え、その数は増加傾向にあります。

◆コト消費 Googleトレンド (2021年10月現在)

これ以外にもコト消費の増加を裏付けるものに、2015年に株式会社ジェイアール東日本が実施した生活調査があります。内容は、宝くじの高額当選をした場合の使用用途についてヒアリングしたものです。その結果では、40%以上の人がコト消費と回答しています。

引用元:株式会社ジェイアール東日本支部 総務局広報部 jeki NEWS PDFより

このように顧客の興味や関心は、経験による価値を重視する「コト消費」へ推移しています。そのため、新しい商品やサービスを開発する際には、購入後に顧客が得られる体感にも意識を向けなければなりません。

イノベーションの成功例 社会状況との連動による情報収集

近年、経済産業省ではキャッシュレスの推進に注力しています。その理由は、消費者に利便性をもたらし、事業者の生産性向上につなげるためです。

2020年8月に株式会社クロス・マーケティングが実施した「キャッシュレス決済に関する調査」によると、買い物時の決済方法は、現金・クレジットカードの利用が7割、QRコード・電子マネーの利用は3割となっています。

引用元:株式会社クロス・マーケティング キャッシュレス決済に関する調査より

このように現代では、キャッシュレスによる決済が広まりつつあります。そこで、大手コンビニチェーンのファミリーマートでは、スマートフォンによる決済手法として2019年7月より「ファミペイ」をスタートさせました。

ファミペイの優位性は「キャッシュレス」を超えた利便性です。決済機能以外にも、ポイントカード、クーポン、スタンプ、回数券などがスマートフォンアプリに統一されているため「お財布レス」で買い物ができます。さらに、2019年11月からスタートしたマルチポイントサービスにより、dポイント・楽天ポイント・Tポイントが使用できるようになりました。

「17番目のペイ」と呼ばれ、競合と比べると後発であったファミペイ。しかし、これらの利便性を評価されたことで、2019年10月時点でのダウンロード数は370万を突破。さらには、数ある競合を抑えて「アプリ オブ・ザ・イヤー 優秀賞」を受賞しています。

社会状況に合わせた的確な分析、そして状況と連動したイノベーションの良い例と言えるでしょう。

引用元:ファミリーマートホームページより

参考:経済産業省 キャッシュレスに関する説明資料等

  :株式会社クロス・マーケティング キャッシュレス決済に関する調査

  :https://ascii.jp/elem/000/004/003/4003476/

新規事業開発における効果的な調査手法「リーンスタートアップ」

新規事業の開発が、初期段階で成功することは稀有なことです。状況に応じた計画の変更や改善ができなければ、成功は遠のくばかり。

そのため新規事業の開発では、イノベーションによるアイデアの創出、計画の実行、評価などの様々な行動プロセスを実施する必要があります。

そこで、新規事業の開発で効果的な調査手法として、リーンスタートアップとMVPについて解説致します。

リーンスタートアップとは

リーンスタートアップとは、顧客が満足できるサービスや商品を開発していくマネジメント手法の一つです。その特徴は、無駄を省くこと。リーンスタートアップを活用することで、需要につながらないアイデアの構築を防ぎ、ロスの圧縮につながります。

リーンスタートアップでは、以下の点を重要視しています。

  • 無駄を省き、手間や費用をかけないこと
  • 短期間で実施すること
  • 思い込みに囚われず、顧客の反応を的確に取得すること
  • 情報収集と分析を繰り返し、改善させること

多くの人が計画段階では、商品やサービスに自信を持っているはず。しかし、実行に移すと上手くいかないこともしばしば。そのため「失敗時のロスを減らす」には、リーンスタートアップの活用が効果的なのです。

MVPの作成

MVPとは「Minimum Viable Product」の頭文字をつないだもので、直訳すると「実用最小限の商品」の意味になります。言い換えれば「顧客が価値を感じる最小限の機能を備えた商品やサービス」です。

MVPのポイントは、初めから全てを完成させるのではなく、一つひとつモニターや顧客の反応を確認しながら機能を追加していく点にあります。

これにより無駄を減らし、顧客が理想とする商品やサービスの開発につながります。また、新規事業の開発にはスピードが重要です。一つの商品やサービスに固執するのではなく、次から次へと新しいアイデアを打ち出すことで、先行者利益に期待が持てます。そのため、MVPの作成時は、手早く仕上げるルーティンを身に付けることも重要です。

また、サービスの開発には費用がかかります。完成に近付くほど費用は嵩み、人員も必要です。最小限の試作品に留めておくことで、初期費用を極力抑えることができます。

初めから100%を目指すのではなく、段階を分けて徐々に100%に近付けることがMVPの有効な活用法です。

リーンスタートアップとMVPの活用手順

リーンスタートアップは、以下の手順で実施します。

  1. 計画したアイデアを構築する
  2. 製品の反応を確かめ計測する
  3. 実行した内容を、データに照らし合わせて検証する
  4. 検証後、状況に応じて改善・再構築する

①「構築」

ここではアイデアや仮説を基に、新商品や新しいサービスの企画案を作成します。その際は、顧客ニーズに合わせて「どのような商品やサービスが求められているか」について重点的にアイデアを練ると良いでしょう。

②「計測」

次に、モニターもしくは少人数の顧客に、MVP(試作品)を提供して反応を見ます。この際は、ロスを懸念して手間や費用をかけないことがポイントです。

③「分析・検証」

続いて、初期に立てた仮説と誤りがないか検証します。もし、想定していたものと違う場合は原因を分析する必要があります。

④「改善・再構築」

最後に分析した結果を基に改善。また、継続しても期待する結果が得られない場合は、①の構築からやり直します。

新規事業の開発は、とにかくチャレンジすることが肝要です。数を打つためにも、これらのサイクルを高速で繰り返す習慣を身につけましょう。

更なる進化を、新規事業開発とオープンイノベーション

これまでのイノベーションは、自社内で実施されることが一般的でした。その理由は、企業の独自性や優位性を確保すると同時に、他社への情報流出を防ぐためです。

しかし近年では、比較が容易な現代人の肥えた目を満足させることができず、この「自前主義」に限界を感じている企業が多く存在します。

そこで、抜本的な解決手法として生み出されたのが、オープンイノベーションです。ここでは、オープンイノベーションの持つ意味と重要性ついて解説致します。

オープンイノベーションとは

オープンイノベーションとは、他社や学校、または病院などの外部機関と協力して実施されるイノベーションです。自前主義(クローズドイノベーション)と違い、知見が深い専門のプロと結託することで、新しい技術や商品開発につながります。

オープンイノベーションが重要視されるようになった背景には、プライオリティの変化があります。これまでの企業は、企業価値やブランド力による自社の優位性を重視していました。しかし近年では、顧客満足の向上を第一に考え、他社と協力関係を結ぶ企業が増えています。

その目的は「競合」するのではなく「共存」することで、より顧客の求める商品の開発につなげることです。また、異業種交流を繰り返すことで視野が広がり、新しいアイデアの創出にもつながります。

なぜ、新規事業開発にオープンイノベーションが必要なのか

新規事業の開発には、オープンイノベーションが必要です。その理由は、事業の軸となり強みとなる商品やサービスを生み出すためです。

現代の市場は、物が飽和し競争が激化しています。次から次へ生み出される新商品のスピードに追いつけず、気付けば取り残されてしまうことも。勝ち抜くには、突出した自社の強みを伸ばすか、新しいアイデアを創出するかが必須となります。

いずれにせよ、クローズドイノベーションに留めて手を拱くのではなく、オープンイノベーションを取り入れて視野を広げなければなりません。

オープンイノベーションにより、不足している機能を調達し、画期的なアイデアの創出につなげる。同時に、自社の強みを活かし独自性を伸ばすことも大切です。

また、新規事業は市場での認知度が低いため、商品やサービスに対する信用度も必然的に低くなります。このようなケースを打開するには、大手企業と協業しオープンイノベーションを実施することが効果的です。

自社にある突出した強みを活かし、大手企業と契約を結ぶことができれば早い段階で成功に期待が持てます。実際にトヨタ自動車などの大手企業も、日の浅いスタートアップ企業と協業してオープンイノベーションを立ち上げています。(※TOYOTA NEXTより)

引用元:首相官邸 成長戦略ポータルサイト オープンイノベーションの推進より

まとめ

新規事業の開発では、時代が求めている商品やサービスをイノベーションにより創造する必要があります。

前述したとおり、需要があるからといって、手当たり次第に動画をアップロードしてもYouTuberとして成功はできません。有名YouTuberは誰しもイノベーションを繰り返し、今の視聴者が求めている動画を創出し続けています。企業などでも同様に、今の顧客が求めている商品やサービスを開発することが肝要です。

また、時代はモノからコトへ流れています。モノの価値に囚われるだけでなく、コトの意識も強める。購入したモノから得られるコト(体感価値)を高めることも、忘れてはなりません。

そして、生み出されたアイデアを効率よく実行するため、リーンスタートアップとMVPを活用しましょう。これらのプロセスを洗練させることで、ロスを減らし成功への精度が高まるはずです。

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