- 大企業がどのように新規事業を推進しているか知りたい
- 大企業が新規事業を立ち上げる際のポイントを知りたい
- 大企業に新規事業を進める際に陥りがちな課題を知りたい
このような要望・悩みを抱えていませんか?
今回は大企業が新規事業を立ち上げる際に抱える課題や課題を解決するポイント、事例を紹介します。
大企業が新規事業を立ち上げる理由
中小企業白書によると、以下のような背景で新規事業の立ち上げを検討しています。
- 新しい柱となる事業の創出
- 顧客・取引先の要請やニーズへの対応
- 他社との競争激化
- 既存市場の縮小・既存事業の業績不振
- 新事業のアイデア実現
- 地域社会への貢献
- 下請取引からの脱却
- 企業間連携の打診
- 経営者の交代による方針転換
- 土地・設備等の遊休資産の活用
これらの理由は、市場の縮小や既存企業の競争激化など外部要因と、新しい収入源の確保や顧客などによる声の反映などの内部要因に分かれます。
大企業で新規事業の立ち上げが難しい理由?
大企業で新規事業の立ち上げが難しいのは、以下の3つが主な理由です。
- 新規事業の立ち上げに適した人材不足
- 新規事業のノウハウ不足
- 縦長の古い組織構造
それぞれの理由を見ていきます。
新規事業の立ち上げに適した人材不足
1つ目は人材不足です。多くの企業で悩むことが人材不足です。人材関連では、以下のような課題があります。
- リソース不足
- リスクを嫌う人材が多い(安定志向の人材が多い)
- 情熱不足
新規事業の立ち上げ経験を有している人材は少ないのが現状です。また、大企業に属す人材はリスクを嫌う安定志向の人材の傾向があります。そのため、社内の新規事業の立ち上げ人材を募る公募制度でもなかなか人が集まらないです。
情熱不足に陥る原因は、新規事業の成果が出るまで時間が掛かる点です。新規事業立ち上げ当初は雑務が多く、その上成果が出る可能性も高くありません。長期間雑務メインでなかなか成果が出ないとやりがいを見つけることが難しく、モチベーションを落としてしまいます。
新規事業のノウハウ不足
2つ目はノウハウ不足です。新規事業の立ち上げは、以下のようなノウハウ不足で失敗するケースがあります。
- 事業のPDCAを回すスピードが遅い
- ターゲットを明確化や変更ができない
- 撤退基準が定められていない
大企業ほど1つの物事を決める際の関係者が多いため、1施策の企画〜実施〜効果測定までの時間を要します。そのため、1施策を終える頃には競合他社が先にプロダクトやサービスをリリースしているなど、企画時とは市場の状態が変わっています。
また、施策の実行までの時間がかかる要因としては新規事業を進めるノウハウが蓄積されていないため、遠回りして進めるケースです。加えてノウハウ不足が故、ターゲットや撤退基準などの詳細が決まっておらず、判断が後手に回ってしまうこともあります。
縦長の古い組織構造
3つ目は組織構造です。組織構造に関する課題は、以下の3つです。
- 意思決定の関係者が多く、承認が降りづらいから
- 短期間で既存事業と同等の成果を求められるから
- ブランド価値やプライドが高いから
大企業では1つの意思決定に複数の人・部署が関わります。そのため、ある部署で新規事業の話題が出て、稟議を通してもどこかの人・部署が止めてしまうとそれ以上進めることができません。また、大企業は成果創出を短期間で求められます。新規事業の立ち上げは難しいため、短期間で大企業の既存企業同様のリターンを創出することができず頓挫してしまう可能性もあります。加えて、新規事業のブランド価値や経営層のプライドは高いです。高いが故、中途半端な新規事業の実施は認められず新規事業の立ち上げができないケースもあります。
大企業が新規事業を立ち上げる際のポイント
ここまで、大企業が新規事業の立ち上げに失敗する理由を紹介しました。では、どうすれば大企業でも新規事業の立ち上げに成功することができるのでしょうか?ここでは、成功するポイントを紹介します。
人材登用を積極的に行う
1つ目は人材登用を積極的に行うことです。新規事業に適した人材を獲得するためには人材育成や採用、アウトソーシングの活用が効果的です。
人材獲得については、以下の記事をご覧ください。
組織制度(仕組み)や文化を整える
2つ目は組織制度(仕組み)や文化を整えることです。新規事業の立ち上げを行うためには必要な組織内制度を確立することが大切です。新規事業の担当者が新規事業の提案や開発した成果を正しく評価することで、モチベーションを落とすことなく仕事に注力することができます。
具体的には、以下のようなことを行うことが得策です。
- 社内公募で新規事業の案を評価できる制度を設け、評価する
- 意思決定の基準と評価者を明確にし、プロセスを構築する
- 新規事業の判断軸を社外に委ねる 例)クラウドファウンディング、広告、第3者にヒアリング
大企業の新規事業の取り組み事例
ここまで新規事業を立ち上げる際に抱える課題とその課題の対処ポイントを紹介しました。ここでは、実際に大企業がどうやって新規事業の立ち上げ、推進を行っているかを紹介します。
紹介する企業は、以下の7つです。
- リクルートホールディングス
- サイバーエージェント
- 博報堂DYホールディングス
- KDDI
- ソフトバンク
- ソニー
- パナソニック
リクルートホールディングス
リクルートホールディングスにはリクルートグループ会社従業員を対象にした「Ring」という新規事業提案制度があります。この制度を通して『ゼクシィ』や『R25』、『スタディサプリ』などのサービスが誕生しました。審査を通過すると正式に事業開発を進めることができ、段階的に予算やリソース、サポートを受けることができます。
サイバーエージェント
サイバーエージェントには、以下のような新規事業の創出を後押しする制度があります。
あした会議
「あした会議」は2006年に開始した執行役員を中心としたチームを組み、サイバーエージェントの「あした(未来)」に繋がる新規事業や課題解決の方法などを提案、決議する会議です。この会議を通して設立された子会社は32社。それらから創出された売上高は累計約2,880億円、営業利益約405億円とされています。
CAJJプログラム/スタートアップJJJ
どちらも事業創出と成長を促進させ、事業の撤退基準を明らかにしたサイバーエージェント独自の制度です。「CAJJプログラム」は収益化している事業、「スタートアップJJJ」は原則設立2年以内のスタートアップ事業対象として支援します。
新規事業創出プロジェクト Cycom(サイコン)
2019年10月に開始された社員だけでなく、内定者が新規事業の提案にチャレンジできるプロジェクトです。書類審査が通った新規事業案をサイバーエージェントの代表の藤田社長にプレゼンし、その模様を社内向けに動画配信しています。プレゼンの様子やフィードバック内容を社員が学べます。
博報堂DYホールディングス
2021年1月に博報堂DYメディアパートナーズは、デジタルマーケティング事業やモビリティサービス事業を行うナイル株式会社と新規事業開発の推進を目標に資本業務提携をはじめました。デジタルトランスフォーメーション(DX)によって変革する社会の中、今までのビジネスモデルに縛られない事業開発を模索しています。
KDDI
KDDI株式会社はKDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)という「事業共創プラットフォーム」を設立しています。スタートアップのビジネスアイデアやテクノロジー、KDDI ∞ Laboに集まった様々な大企業のノウハウを結集させ、社会インパクトのある新規事業を一緒に創造します。
ソフトバンク
ソフトバンクグループでは2011年から「ソフトバンクイノベンチャー」として、社内企業制度を実施しています。テーマは「事業創造」や「事業を創出できる人材の育成」。社員の新規事業提案を積極的に奨励し、挑戦できる企業風土づくりを進めています。
ソニー
ソニーグループは「SSAP(Sony Startup Acceleration Program)」という新規事業の立ち上げや販売、拡大までをサポートするプログラムの展開をしています。ソニーグループが保有している起業のノウハウや開発環境を新規事業創出を夢見る人に提供しています。目指しているゴールはスタートアップから大企業の新規事業まで、クリエイターのビジョン実現をサポートし、イノベーションエンジンとして、より良い社会を想像することです。
パナソニック
パナソニックグループ「Game Changer Catapult (ゲームチェンジャー・カタパルト)」というプロジェクトを立ち上げて、新規事業の推進を目指しています。
目的は、今まで培った家電のノウハウと変化の激しい社会の繋がりを持って迅速に失敗を恐れず挑戦し、世界を変えることです。最近ではリクルートが行う新規事業立ち上げの支援制度「Ring」とイノベーションを生む取り組みもしています。
まとめ
いかかでしたか?本記事では大企業が新規事業を立ち上げる際に抱える課題や課題を解決するポイント、事例について紹介しました。
大企業が新規事業を行う際、抱えがちな課題はこちらです。
- 新規事業の立ち上げに適した人材不足
- 新規事業のノウハウ不足
- 縦長の古い組織構造
また、課題を対処するポイントは、以下です。
- 人材登用を積極的に行う
- 組織制度(仕組み)や文化を整える
新規事業を立ち上げる、推進する参考にしていただけますと幸いです。一読、頂きありがとうございました。
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